安楽椅子のモノローグ

完全なる頭でっかちを目指す

ミステリ

メフィスト賞の軌跡―その15 氷川透

コムロの曲がみんな同じだって?〔…〕むしろ興味深いのは、彼の曲って、どうやって作ったのかプロシジャが露骨に透けて見えることだよね。彼の作曲は、きわめてルーティンなパターンに則った作業にちがいない。才能もひらめきも必要ない。それにくらべて、宇…

メフィスト賞の軌跡―その14 古処誠二

それは平和で結構なことだ。それが望ましいことなんだ。武力を持っているような組織は、国民から白い目で見られる必要があるんだ。 【あらすじ】 自衛隊は隊員に存在意義を見失わせる「軍隊」だった。訓練の意味は何か。組織の目標は何か。誰もが越えねばな…

メフィスト賞の軌跡―その13 殊能将之

「きみがハサミ男だったんだね。さあ、ぼくといっしょに来てくれないか」 ミステリ小説に限らず、傑作に出会うというのは幸運であると同時にもの悲しさも伴う出来事である。読んでいる間は高揚感に包まれるが、読み終わってしまうと、もう二度と初読時と同じ…

メフィスト賞の軌跡ーその12 霧舎巧

面白い、ドッペルゲンガーの館というわけか 「館」と聞けば、ミステリファンなら涎が出るほどの大好物である。僕のような、にわかファンにも心に残る館ものはいくつかある。島田荘二『斜め屋敷の犯罪』、綾辻行人『十角館の殺人』、鮎川哲也『リラ荘殺人事件…

メフィスト賞の軌跡―その11 髙里椎奈

Zu Ende sehen, Zu Ende denken 【あらすじ】美男探偵3人組?いいえ実は○×△□です!見たところ20代後半の爽やかな青年・座木(くらき・通称ザギ)、茶髪のハイティーン超美形少年・秋、元気一杯な赤毛の男の子リベザル。不思議な組み合わせの3人が営む深山木(ふか…

メフィスト賞の軌跡―その10 中島望

正義なき力は無能なり、力なき正義もまた無能なり。 悪の華が咲き乱れる荒廃しきった高校へ転校した少年、逢川総二(あいかわそうじ)は、あの“極真”の達人だった!VS.中国拳法、ボクシング、少林寺拳法、柔道、空手、剣道。激闘は限界を超えて加速する!第1…

メフィスト賞の軌跡―その9 高田祟史

ある型のウイルスなどに至っては写真も無ければ、当然その姿を見たという人間はいない。しかし、その存在を疑っている科学者もいない上に、治療薬まで用意されている。この現実はどうだ? こちらの方がよほど怪異だ。 百人一首カルタのコレクターとして有名…

メフィスト賞の軌跡―その8 浅暮三文

しかしな、ダブェストンの郵便配達は男の中の男の仕事さ。素人は郵便を出しに行くまでに迷って野垂れ死にしてしまう奴もいる。たまに向こう見ずな馬鹿が郵便泥棒をたくらむが、大抵、野ざらしの骸骨さ。 タニアを見かけませんか。僕の彼女でモデルなんですけ…

メフィスト賞の軌跡―その7 新堂冬樹

ゴードン・ドライ・ジンもロンリコ・ホワイトも、洒落たカクテルにしては貰えず、私に生(き)のまま飲まれていた。今度はヘルメス・アブサンが、消毒液の代わりにさせられようとしていた。 【あらすじ】 債務者への過酷な徴収から「悪魔」と呼ばれた街金融…

メフィスト賞の軌跡―その6 積木鏡介

革製の黒い乗馬靴、黒い胴着、黒い頸布、それに黒いカウボーイハット――黒尽くめの男だ。骨張った頬に、冷酷で残忍そうな細い目(どこかで見たような顔だ)。そして腰に巻かれたガンベルト!(西部劇のカウボーイ、いや、ガンマン?)唐突に、男の嗄れた濁声…

メフィスト賞の軌跡―その5 浦賀和宏

俺がそう決めたんだ。誰にも文句は―言わせない。 【あらすじ】父が自殺した。突然の死を受け入れられない受験生・安藤直樹は父の部屋にある真っ黒で不気味な形のパソコンを立ち上げる。ディスプレイ上で裕子と名乗る女性と次第に心を通わせるようになる安藤…

メフィスト賞の軌跡―その4 乾くるみ

Jの神話 (文春文庫) 作者: 乾くるみ 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2008/11/07 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 9回 この商品を含むブログ (31件) を見る 【あらすじ】全寮制の名門女子高「純和福音女学院」を次々と怪事件が襲う。1年生の由紀は塔…

噂―作品に隠されたもうひとつの仕掛け

噂 (新潮文庫) 作者: 荻原浩 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2006/02/28 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 64回 この商品を含むブログ (174件) を見る 【あらすじ】 「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてる…

メフィスト賞の軌跡―その3 蘇部健一

六枚のとんかつ 改訂新版 (講談社ノベルス) 作者: 蘇部健一 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1998/02/24 メディア: 新書 クリック: 1回 この商品を含むブログ (4件) を見る 京極夏彦、森博嗣、清涼院流水ときて、蘇部健一の登場である。今思えばすごい顔ぶ…

メフィスト賞の軌跡―その2 清涼院流水

コズミック 世紀末探偵神話 (講談社ノベルス) 作者: 清涼院流水 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/01/20 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 【あらすじ】『今年、1200個の密室で、1200人が殺される。誰にも止めることはできない』―1994年…

メフィスト賞の軌跡―その1 森博嗣

「先生……、現実ってなんでしょう?」萌絵は小さな顔を少し傾けて言った。「現実とは何か、と考える瞬間にだけ、人間の思考に現れる幻想だ」犀川はすぐ答えた。「普段はそんなものは存在しない」 森博嗣について、今さら何か語るなんてとても気恥ずかしい気持…

メフィスト賞の軌跡―その0 京極夏彦

京極夏彦がミステリ界に及ぼした影響は計り知れない。いや、ミステリ界と限定する必要は全くない。京極夏彦は広く日本のエンタテインメントを改革したと言っても言い過ぎではない。いくつか列挙してみよう。 京極夏彦がいなければメフィスト賞は誕生しなかっ…

電氣人間の虞―monster surprised you!

電氣人間の虞 (光文社文庫) 作者: 詠坂雄二 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2014/07/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 【あらすじ】 「電気人間って知ってる?」一部の地域で根強く語られている奇怪な都市伝説。真相に近付くものは次々に…

NO推理、NO探偵?-きっと残りページの問題

NO推理、NO探偵? (講談社ノベルス) 作者: 柾木政宗 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/09/22 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る メフィスト賞の作品はできる限りタイムリーに読むようにしている.受賞作品はどれも新奇な想像力と大胆…