安楽椅子のモノローグ

完全なる頭でっかちを目指す

欅坂46は宇宙際タイヒミュラー理論である

 宇宙際タイヒミュラー理論が一体何を語る理論なのかを僕は知らない。どうやらABC予想という数学史上最大級の謎を証明するために使われたということは知っているが、ではABC予想とは何かと聞かれたところで、僕にできるのはただうつむくことだけだ。自分が生きている間に宇宙際タイヒミュラー理論ABC予想を理解できる日はきっとやってこないだろう。それどころか数論の入口にさえ到達できないままに違いない。

 

 先日のニュースで、宇宙際タイヒミュラー理論創始者である望月新一先生が、ABC予想を証明したと報道された。もう少し細く言うと、望月氏が証明したと宣言したのは2012年だが、その証明の検証に時間がかかりようやくこのほど正式に認められたということのようだ。

 

 望月氏は、天才数学者(天才のなかの天才といってよい経歴だ)だが、講演をかたくなに拒み続け、それがABC予想の検証に時間がかかった原因でもあるようだ。氏がなぜ講演を拒み続けたのかはわからない。自分に語れることはもう何もないと思ったのかもしれないし、うまく語れる自信がなかったのかもしれない。恐らくはどちらもあるのだろう。

 

 前置きが長くなったが、今日は別に望月氏の成し遂げた数学史上の一大業績を語るために記事を書いているわけではない。今日僕が語りたいのは欅坂46についてである。

 

 ではなぜ望月氏の話を書いてきたのかというと、実は望月氏が自身のブログで欅坂46について語っている記事が存在し、今かなり話題になっているからだ。 

 

 第67回紅白の衝撃、特に欅坂46サイレントマジョリティに対する衝撃とその歌詞に対する熱い思いが綴られている。氏はサイレントマジョリティの歌詞と彼の宇宙際タイヒミュラー理論との類似性について語る。氏の語る言葉は少なくとも僕にはちんぷんかんぷんでちっとも理解できない(しかしこれは千葉雅也のいう言語偏重の究極の形で、勉強というものの最も洗練された形ではある)のだが、氏がいかにサイレントマジョリティに感動したかは十二分に伝わってくる。

 「サイレントマジョリティー」の画像検索結果

 僕が欅坂46を初めて知ったのは、2016年に偶然視聴していたスペースシャワーTVサイレントマジョリティのMVを観たときだった。イントロがすでに「これは違う」と感じさせるが、その後、平手が低めの声で歌い始めると鳥肌が立つ。終始アイドルらしからぬ刺すような目線で歌い続ける彼女たちの姿は、それまでのアイドル像を大きく覆すものとなった。歌詞もまた衝撃的で、大人への反抗、従順さに対する徹底した批判に僕は最初、自らの聴く耳を疑ったほどである。
 その後、2作目ではポエトリーリーディングにも挑戦した夏のメロディ「世界には愛しかない」、3作目は平手のソロダンスが圧巻と称された「二人セゾン」、4作目はまさにスルメ曲、聴けば聴くほどに耳に残る原点回帰の「不協和音」、5作目は男装でのパフォーマンスが印象的な「風に吹かれても」と、ヒット作を連発し続け、今では音楽シーンで不動の地位を築きつつある。

 

 もはやアイドルではない。 いや、欅坂46こそ新しいアイドルのプロトタイプなのかもしれない。

 

 派生ユニットも魅力的である。ゆいちゃんず、てちねるゆいちゃんず、青空とMARRY、FIVE CARDS、五人囃子、156(いちころ)。ユニット曲にも1曲たりともハズレがない。ここまでくると断言したっていい気がしてくる。「欅坂46は間違いなくアイドルの、そして音楽の歴史を塗り替える」と。

 

 ひらがなけやきもすでに一人立ちし、漢字に迫るほどのグループとなっている。こんなに目が離せないグループは今の日本に多くはいない。

 

 望月新一だけではない、すでに多くの有名人が欅坂46について語り、その虜となっている。彼女たちは、大人への反抗を高らかに謳いながら、誰に媚びることもなく、その実力だけで人気を勝ち得ているのだ。

 

 FNS歌謡祭における平手友梨奈の鬼気迫るコンテンポラリーダンスが記憶に新しい。けものフレンズとのコラボも最高だった。年末に向かい、彼女たちの活躍を見る機会はどんどん増えそうだ。

 

 いつか望月新一欅坂46とがコラボする日も来るかもしれない。