安楽椅子のモノローグ

完全なる頭でっかちを目指す

人工知能は人間を超えるか―現代人の必携書

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書) 作者: 松尾豊 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版 発売日: 2015/03/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (38件) を見る 人工知能(Artificial Intelligence:以下AI)は、…

メフィスト賞の軌跡―その2 清涼院流水

コズミック 世紀末探偵神話 (講談社ノベルス) 作者: 清涼院流水 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/01/20 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 【あらすじ】『今年、1200個の密室で、1200人が殺される。誰にも止めることはできない』―1994年…

ニューロマンサー―それはすべてのサイバーパンクの母型

SF

サイバーパンクという言葉を僕が初めて聞いたのは、士郎正宗『攻殻機動隊』に関する書評を読んだときだった、というおぼろげな記憶がある。僕は『攻殻機動隊』はアニメばかり観ていたから、コミックの方を読んだときは、テイストの違いに結構驚いたものだ。…

睡眠の科学・改訂新版―人体最大の謎・睡眠の秘密に迫る

神は現世におけるいろいろな心配事のつぐないとして、われわれに希望と睡眠とを与え給うた。(ヴォルテール) 僕は睡眠医学について、全くの門外漢である。しかし、専門外の僕から見ても近年、「睡眠」に対する注目がますます増加していることはわかる。不眠…

メフィスト賞の軌跡―その1 森博嗣

「先生……、現実ってなんでしょう?」萌絵は小さな顔を少し傾けて言った。「現実とは何か、と考える瞬間にだけ、人間の思考に現れる幻想だ」犀川はすぐ答えた。「普段はそんなものは存在しない」 森博嗣について、今さら何か語るなんてとても気恥ずかしい気持…

メフィスト賞の軌跡―その0 京極夏彦

京極夏彦がミステリ界に及ぼした影響は計り知れない。いや、ミステリ界と限定する必要は全くない。京極夏彦は広く日本のエンタテインメントを改革したと言っても言い過ぎではない。いくつか列挙してみよう。 京極夏彦がいなければメフィスト賞は誕生しなかっ…

木下古栗―古栗Tシャツ欲しい

木下古栗(きのした・ふるくり) 1981年、埼玉県生まれ。2006年に「無限のしもべ」で第49回群像新人文学賞を受賞。著書に『ポジティヴシンキングの末裔』『いい女vs.いい女』『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』『グローバライズ』がある。 木下古栗…

皮膚感覚と人間のこころ―最大にして最強の臓器”皮膚”

皮膚感覚と人間のこころ (新潮選書) 作者: 傳田光洋 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2013/01/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 外界と直接触れ合う皮膚は、環境の変化から生体を守るだけでなく、自己と他者を区別する重要な役割を担…

夢宮殿―暗く、とても暗い

夢宮殿 (創元ライブラリ) 作者: イスマイル・カダレ,村上光彦 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2012/02/29 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 24回 この商品を含むブログ (17件) を見る 【あらすじ】 <タビル・サライ>、別名<夢宮殿>。それは国民…

電氣人間の虞―monster surprised you!

電氣人間の虞 (光文社文庫) 作者: 詠坂雄二 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2014/07/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 【あらすじ】 「電気人間って知ってる?」一部の地域で根強く語られている奇怪な都市伝説。真相に近付くものは次々に…

ボクたちはみんな大人になれなかった-1999年地球は滅亡しなかった

ボクたちはみんな大人になれなかった 作者: 燃え殻 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/06/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (6件) を見る この本を手に入れるのにかなりの時間がかかった。ネットで注文してから、発送までにこんなに時間がかか…

顕微鏡、アート、キャラクター ― 芸術は生物だ!

21世紀のキーワードとはなんだろう。「フラット化」、「観光」、「シンギュラリティ」、「AI」、「量子コンピュータ」・・・思いつくままに挙げても無数にある。他にも「ポストゲノム」あるいは「エピジェネティクス」。いや、この2つはいささかscientific過…

さまよえる自己―精神病理はどこへ向かうか

さまよえる自己―ポストモダンの精神病理 (筑摩選書) 作者: 内海健 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2012/05/01 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 8回 この商品を含むブログ (7件) を見る 僕がこの本を読んだのは、かれこれ5、6年前になる。最近引っ…

カズオ・イシグロ―あるいは長崎の多様性

もう住んでいないが、僕は長崎生まれ長崎育ちである。誰しもそうかもしれないが、僕は子どもの頃、自分の生まれ育った街のことがあまり好きではなかった。坂道だらけで、ところどころに馬の糞が落ちている街は、子どもの僕にはひどく野暮ったく感じられた。…

アラビアの夜の種族-あとがきさえ嘘をつく

今週のお題「読書の秋」 今年の8月、僕はオハイオ州にいた。デレク・ハートフィールドの墓を訪れるためだ。ハートフィールドの名を聞いたことのある人は多くはいないだろう。あまり、いや、まったくというほど知名度はない。日本においてもアメリカにおいて…

時計語

きちんとわかる時計遺伝子 (産総研ブックス) 作者: 産業技術総合研究所,産総研= 出版社/メーカー: 白日社 発売日: 2008/01 メディア: 単行本 クリック: 17回 この商品を含むブログ (4件) を見る 今日は小説について書くつもりだったが、変更する。どうしてか…

阿・吽ー具現化されるエネルギー

阿・吽 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) 作者: おかざき真里,阿吽社 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2014/10/10 メディア: コミック この商品を含むブログ (13件) を見る 阿・吽。万物の始原と終わり、あるいは理と智。それは吸う息と吐く息でもある。ひと…

勉強の哲学-来たるべきバカに、なれ

僕は一度大学を出た後、社会人を経験し、もう一度、別の大学に通った経歴を持っている。今の世の中そんな人はたいして珍しくはないだろう。1度目はそうでもなかったが、2度目は学部の性質もあって、周囲には僕と同じような経歴の人々が(編入学者も含めて)1…

ふくろうくん-うたえなくなったうた

今週のお題「読書の秋」 絵本というのは、子どものためだけのものでは決してない。むしろ、大人に対しての方が親和性の高い絵本というのもある。今回紹介する『ふくろうくん』は、まさに大人であるすべての人に読んでもらいたいと思う名作である。 ふくろう…

独物語-その2

ブログ上ではジャンル問わずでいろいろな本を読んでいるように見せかけているが(もちろんきちんと読んではいます)、実際には、僕が読む本はほとんどが生命科学にまつわるものである。だがそれは単なる職業上の問題であり、僕がことさら生命科学に拘泥して…

サクラダ・リセット-今世紀の奇跡あるいはスワンプマンの話

サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫) 作者: 河野裕,椎名優 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング) 発売日: 2009/05/30 メディア: 文庫 購入: 13人 クリック: 232回 この商品を含むブログ (169件) を見…

NO推理、NO探偵?-きっと残りページの問題

NO推理、NO探偵? (講談社ノベルス) 作者: 柾木政宗 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/09/22 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る メフィスト賞の作品はできる限りタイムリーに読むようにしている.受賞作品はどれも新奇な想像力と大胆…

はじめての英語史-問題を裏から考える

僕は高校生のとき,外国語系の学部に進学したいと思っていた時期があった.しかし,結局その道は断念してしまった.僕は当時あまりにも視野が狭かったために外国語を単なるコミュニケーションツールとしてしか捉えきれていなかったことが,その理由である(…

ワイアード、アフリカにいく

WIRED VOL.29/特集「African freestyle ワイアード、アフリカに行く」 作者: Condé Nast Japan (コンデナスト・ジャパン),WIRED編集部 出版社/メーカー: コンデナスト・ジャパン 発売日: 2017/09/11 メディア: 雑誌 この商品を含むブログ (1件) を見る WIRED…

ソラリス―秋の夜長に知的に打ちのめされる

SF

今週のお題「読書の秋」 ソラリス (ハヤカワ文庫SF) 作者: スタニスワフ・レム,岩郷重力,沼野充義 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2015/04/08 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (13件) を見る 巨匠スタニスワフ・レムの数ある著作の中でも,とりわ…

バッタを倒しにアフリカへ―漂流するムシキング

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書) 作者: 前野ウルド浩太郎 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2017/05/17 メディア: 新書 この商品を含むブログ (18件) を見る 各方面で話題になっている本であり,今さら僕が紹介するまでもないかもしれない.しかしそ…

中国行きのスロウ・ボート―埃さえ払えばまだ食べられる

中国行きのスロウ・ボート (中公文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 中央公論社 発売日: 1997/04/01 メディア: 文庫 購入: 6人 クリック: 43回 この商品を含むブログ (183件) を見る 小学校1年生のとき,同じクラスに中国人の男の子がいた.ある日の夕方…

独物語―その1

思いつくままに日々の雑感を書こうかと思い立ち、ブログを開設することにした.しかし、何でも自由に書こうとすると案外書けないというか,書くことがない.世の中には、単なる雑記であるにもかかわらず、深い洞察や思慮深い考察に富んだ文章を書ける人もい…

微分積分学―技法に凝ってはならない

微分積分学 作者: 齋藤正彦 出版社/メーカー: 東京図書 発売日: 2006/07 メディア: 単行本 クリック: 28回 この商品を含むブログ (3件) を見る 多くの理工系の大学生は、1年次に微分積分学と線形代数学の基礎を勉強する.本書は恐らく様々な大学で教科書もし…

霊山―誤配の愉悦

霊山 作者: 高行健,飯塚容 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2003/10/24 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 9回 この商品を含むブログ (7件) を見る どうしても忘れられない本というのは,きっと多くの人が持っている.その人の人生観に大きな影響を与え…