安楽椅子のモノローグ

完全なる頭でっかちを目指す

2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

メフィスト賞の軌跡―その14 古処誠二

それは平和で結構なことだ。それが望ましいことなんだ。武力を持っているような組織は、国民から白い目で見られる必要があるんだ。 【あらすじ】 自衛隊は隊員に存在意義を見失わせる「軍隊」だった。訓練の意味は何か。組織の目標は何か。誰もが越えねばな…

欅坂46は宇宙際タイヒミュラー理論である

宇宙際タイヒミュラー理論が一体何を語る理論なのかを僕は知らない。どうやらABC予想という数学史上最大級の謎を証明するために使われたということは知っているが、ではABC予想とは何かと聞かれたところで、僕にできるのはただうつむくことだけだ。自分が生…

症状を知り、病気を探る―ヤンデル先生に会いたい

OPQRST ―― アルファベットの歌ではない。医学の世界でOPQRSTといえば、問診の基本である。OはOnset(発症様式)、PはPalliative & Provocative(増悪・寛解因子)、QはQuality & Quantity(症状の性質や強さ)、RはRadiation or Region(放散や場所)、SはSy…

メフィスト賞の軌跡―その13 殊能将之

「きみがハサミ男だったんだね。さあ、ぼくといっしょに来てくれないか」 ミステリ小説に限らず、傑作に出会うというのは幸運であると同時にもの悲しさも伴う出来事である。読んでいる間は高揚感に包まれるが、読み終わってしまうと、もう二度と初読時と同じ…

中動態の世界 意志と責任の考古学ーあるいは音楽を聴くことについて

國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』は刺激的でスリリングな書物である。こんなにおもしろい思想書を読んだのは久しぶりだった。能動態とも受動態とも違う態「中動態」、失われた態をめぐる言語的・哲学的・思想史的考察はまさに圧巻の一言である…

メフィスト賞の軌跡ーその12 霧舎巧

面白い、ドッペルゲンガーの館というわけか 「館」と聞けば、ミステリファンなら涎が出るほどの大好物である。僕のような、にわかファンにも心に残る館ものはいくつかある。島田荘二『斜め屋敷の犯罪』、綾辻行人『十角館の殺人』、鮎川哲也『リラ荘殺人事件…