2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧
俺がそう決めたんだ。誰にも文句は―言わせない。 【あらすじ】父が自殺した。突然の死を受け入れられない受験生・安藤直樹は父の部屋にある真っ黒で不気味な形のパソコンを立ち上げる。ディスプレイ上で裕子と名乗る女性と次第に心を通わせるようになる安藤…
生命はリズムを刻む。リズムを刻むことこそ、生きている証なのかもしれない。例えば、消化管の蠕動運動。調和のとれたリズムで運動が行われるからこそ、僕らは食物やその残渣を口から肛門まで送り届けることができる。例えば、ホルモン分泌。その律動的な分…
必読である。この作品を読まずに死ぬのはもったいない。 どこがすごいか、言ってみよう。まず、タイトルが秀逸である。次に、ストーリーがおもしろい。その上、読後感も最高だ。こんな3拍子揃った小説がハズレなわけがない。 何だ、そのあまりに普通の褒め方…
Jの神話 (文春文庫) 作者: 乾くるみ 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2008/11/07 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 9回 この商品を含むブログ (31件) を見る 【あらすじ】全寮制の名門女子高「純和福音女学院」を次々と怪事件が襲う。1年生の由紀は塔…
今週のお題「私の癒やし」 どうしようもなく(身とか心が)くたくたになっているときは、できるだけ何も考えないようにしている。近頃は、ずいぶんと寒くなってきたので、暖かいものが飲みたくなる。そんなに濃くないコーヒーとか、ホットジンジャーとか、ブ…
噂 (新潮文庫) 作者: 荻原浩 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2006/02/28 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 64回 この商品を含むブログ (174件) を見る 【あらすじ】 「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてる…
『又吉直樹のヘウレーカ』は、人生に効く数学の話を聞かせてもらうとコーヒー代はタダ、という風変わりなカフェを舞台に、又吉直樹が若手数学者に話を聞かせてもらう、なかなか趣向を凝らしたTV番組である。九州大学マス・フォア・インダストリ研究所の千葉…
カオス―新しい科学をつくる (新潮文庫) 作者: ジェイムズ・グリック,大貫昌子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1991/12 メディア: 文庫 購入: 10人 クリック: 78回 この商品を含むブログ (11件) を見る キューブラー・ロスはその著書『死ぬ瞬間』の中で、死…
僕だけがいない街 (1) (カドカワコミックス・エース) 作者: 三部けい 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング) 発売日: 2013/01/25 メディア: コミック クリック: 3回 この商品を含むブログ (137件) を見る 【あらすじ】 毎日を懊悩して暮ら…
六枚のとんかつ 改訂新版 (講談社ノベルス) 作者: 蘇部健一 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1998/02/24 メディア: 新書 クリック: 1回 この商品を含むブログ (4件) を見る 京極夏彦、森博嗣、清涼院流水ときて、蘇部健一の登場である。今思えばすごい顔ぶ…
人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書) 作者: 松尾豊 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版 発売日: 2015/03/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (38件) を見る 人工知能(Artificial Intelligence:以下AI)は、…
コズミック 世紀末探偵神話 (講談社ノベルス) 作者: 清涼院流水 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/01/20 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 【あらすじ】『今年、1200個の密室で、1200人が殺される。誰にも止めることはできない』―1994年…
サイバーパンクという言葉を僕が初めて聞いたのは、士郎正宗『攻殻機動隊』に関する書評を読んだときだった、というおぼろげな記憶がある。僕は『攻殻機動隊』はアニメばかり観ていたから、コミックの方を読んだときは、テイストの違いに結構驚いたものだ。…
神は現世におけるいろいろな心配事のつぐないとして、われわれに希望と睡眠とを与え給うた。(ヴォルテール) 僕は睡眠医学について、全くの門外漢である。しかし、専門外の僕から見ても近年、「睡眠」に対する注目がますます増加していることはわかる。不眠…
「先生……、現実ってなんでしょう?」萌絵は小さな顔を少し傾けて言った。「現実とは何か、と考える瞬間にだけ、人間の思考に現れる幻想だ」犀川はすぐ答えた。「普段はそんなものは存在しない」 森博嗣について、今さら何か語るなんてとても気恥ずかしい気持…
京極夏彦がミステリ界に及ぼした影響は計り知れない。いや、ミステリ界と限定する必要は全くない。京極夏彦は広く日本のエンタテインメントを改革したと言っても言い過ぎではない。いくつか列挙してみよう。 京極夏彦がいなければメフィスト賞は誕生しなかっ…
木下古栗(きのした・ふるくり) 1981年、埼玉県生まれ。2006年に「無限のしもべ」で第49回群像新人文学賞を受賞。著書に『ポジティヴシンキングの末裔』『いい女vs.いい女』『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』『グローバライズ』がある。 木下古栗…
皮膚感覚と人間のこころ (新潮選書) 作者: 傳田光洋 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2013/01/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 外界と直接触れ合う皮膚は、環境の変化から生体を守るだけでなく、自己と他者を区別する重要な役割を担…
夢宮殿 (創元ライブラリ) 作者: イスマイル・カダレ,村上光彦 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2012/02/29 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 24回 この商品を含むブログ (17件) を見る 【あらすじ】 <タビル・サライ>、別名<夢宮殿>。それは国民…
電氣人間の虞 (光文社文庫) 作者: 詠坂雄二 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2014/07/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 【あらすじ】 「電気人間って知ってる?」一部の地域で根強く語られている奇怪な都市伝説。真相に近付くものは次々に…
ボクたちはみんな大人になれなかった 作者: 燃え殻 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/06/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (6件) を見る この本を手に入れるのにかなりの時間がかかった。ネットで注文してから、発送までにこんなに時間がかか…
21世紀のキーワードとはなんだろう。「フラット化」、「観光」、「シンギュラリティ」、「AI」、「量子コンピュータ」・・・思いつくままに挙げても無数にある。他にも「ポストゲノム」あるいは「エピジェネティクス」。いや、この2つはいささかscientific過…
さまよえる自己―ポストモダンの精神病理 (筑摩選書) 作者: 内海健 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2012/05/01 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 8回 この商品を含むブログ (7件) を見る 僕がこの本を読んだのは、かれこれ5、6年前になる。最近引っ…
もう住んでいないが、僕は長崎生まれ長崎育ちである。誰しもそうかもしれないが、僕は子どもの頃、自分の生まれ育った街のことがあまり好きではなかった。坂道だらけで、ところどころに馬の糞が落ちている街は、子どもの僕にはひどく野暮ったく感じられた。…
今週のお題「読書の秋」 今年の8月、僕はオハイオ州にいた。デレク・ハートフィールドの墓を訪れるためだ。ハートフィールドの名を聞いたことのある人は多くはいないだろう。あまり、いや、まったくというほど知名度はない。日本においてもアメリカにおいて…
きちんとわかる時計遺伝子 (産総研ブックス) 作者: 産業技術総合研究所,産総研= 出版社/メーカー: 白日社 発売日: 2008/01 メディア: 単行本 クリック: 17回 この商品を含むブログ (4件) を見る 今日は小説について書くつもりだったが、変更する。どうしてか…
阿・吽 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) 作者: おかざき真里,阿吽社 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2014/10/10 メディア: コミック この商品を含むブログ (13件) を見る 阿・吽。万物の始原と終わり、あるいは理と智。それは吸う息と吐く息でもある。ひと…
僕は一度大学を出た後、社会人を経験し、もう一度、別の大学に通った経歴を持っている。今の世の中そんな人はたいして珍しくはないだろう。1度目はそうでもなかったが、2度目は学部の性質もあって、周囲には僕と同じような経歴の人々が(編入学者も含めて)1…
今週のお題「読書の秋」 絵本というのは、子どものためだけのものでは決してない。むしろ、大人に対しての方が親和性の高い絵本というのもある。今回紹介する『ふくろうくん』は、まさに大人であるすべての人に読んでもらいたいと思う名作である。 ふくろう…